ニュースを見ていると国同士が争っていることが多いけど、これは何故なの?
国際情勢がもっと分かるようになりたい…
こんな人は「サクッと分かる ビジネス教養 地政学」がオススメです!
- 国際情勢を知りたいが何から勉強すれば良いか分からない
- ビジネスの教養として地政学を知りたい
- 国際情勢を予想して、投資に役立てたい
『国際政治が「劇」なら、地政学は「舞台装置」』と筆者は言っています。
地政学を学ぶことは国家の裏側にある思惑を知るスキルを身につけることに繋がります。
いまも様々な国で問題が生じていますが、その裏側には地政学が密接に関わっています。地政学というシステムを知ることによって、それぞれの問題の関連性を見出すことができるようになります。
20~30代のビジネスマンが教養として地政学を学べるように作られた入門書です。イラストが多く、初めての方でも見ただけで地政学の話ができるようになっています。実際、高校の世界史で赤点続きだった私でも楽しく読み進めることができました。
また、国際情勢と経済は密接に関連します。地政学というシステムを理解していれば、今後の動きを予想しやすくなり、投資判断にも役立てることができます。特にデリバティブを投資対象としている人にはとても役立つと思います。
「サクッと分かる ビジネス教養 地政学」の内容
地政学とは何か?
先ほど少し紹介しましたが、冒頭で筆者はこう語っています。
例えるなら、国際政治を「劇」とすれば、地政学は「舞台装置」です。
はじめに より抜粋
「劇」の裏側で、そのシステム全体の構造を決めているのは「舞台装置」ですから、国際政治の表面的な部分だけでなく、その裏側にある各国の思惑を理解するためには、地政学の考え方を身につける必要があるのです。
ニュースを見ると、衝突が頻発するのは①アジア、②中東、③ヨーロッパの3つのエリアであることが分かります。地政学は、この3大エリアをめぐる「国のふるまい」の研究といえます。
地政学における国際情勢の研究では、「ある国やエリアをどのやって支配するのか」が非常に重要なポイントです。また、各国はできるだけ効率的に支配することを考えます。その時に大切なのは「道」と「要所」です。
現在、国の存続には他国から石油や電子部品を入手することは必須です。こうした物流は山や海などの地理的条件からルートが限定されています。この特定のルートを奪われると、その国家の存続は難しくなります。
また、道全体を監視する必要はなく、必ず通る「要所」を抑えればその国家を支配することができるのです。
このように地政学を理解して「道」や「要所」を支配すると、関連する国々に対して優位に立つことができます。この優位があれば、直接的な争いをしなくても、経済的な有利な交渉(原料を安値で買う、製品を高値で売るなど)や国際政治下での協力を得るなど、より優位な状況を得ることができます。
このように、地政学では各国の持つリアルな「利益」、「恐怖」、「名誉」に焦点を当て、地理的な側面から各国のふるまいを検証します。
地政学の基本概念4つ
地政学における基本概念4つをご紹介します。
①バランス・オブ・パワー
- 日本語でいえば「勢力均衡」
- 突出した強国をつくらず、勢力を同等にして秩序を保つ
- 1位の国が3位以下の国と協力し、2位の国の勢力を削る
この戦略で世界を制覇したのが大英帝国(昔のイギリス)です。また、冷戦以降のアメリカは常にバランスオブパワーを意識した対外戦略を展開しています。
②チョーク・ポイント
- 物流上の要所
- 海路を航行するうえで絶対に通る関所
- 世界に10か所存在
グローバルされた現在でもエリア間の物流の中心は海路です。国家の運営においてこの海路は命綱となります。
中でもチョーク・ポイントと呼ばれる海上の関所は周辺に対する影響が大きく、どの国が支配しているかは非常に重要です。現在、米国海軍はチョークポイントを多数おさえており、世界の覇権を握る理由のひとつとなっています。
③ランドパワーとシーパワー
- ランドパワー…ロシア・フランス・ドイツなどの大陸国家
- シーパワー…アメリカ・イギリス・日本などの国境の多くを海に囲まれた海洋国家
- 大きな国際紛争はランドパワーとシーパワーのせめぎ合い
ランドパワーの国は他国との国境が陸にあるため、他国へ侵攻しやすく、他国から侵攻されやすいです。そのため、他国からの侵攻を受ける前に侵攻することが基本概念となり大きな強国が形成されます。その後、さらなるパワーを求めて海上へ進出します。
一方でシーパワーの国は防衛に回ることが多く、これまでの大きな国際紛争はランドパワーVsシーパワーの構図となっていることが多いです。
④ハートランドとリムランド
- ハートランド…ユーラシア大陸の心臓部で現在のロシアあたり。寒冷で雨量が少なく、平坦な平野が多いエリアで古くから人が少なく文明が栄えない。
- リムランド…主にユーラシア大陸の海岸線に沿った沿岸部で、温暖で雨量が多く、経済活動が盛ん。
- リムランドではハートランドのランドパワーと周辺のシーパワーが衝突する
ハートランドの国は厳しい環境で栄えにくいため、豊かなリムランドの国を狙ってたびたび侵攻しています。つまり、リムランドはランドパワーとシーパワーが衝突する、紛争が起きやすいエリアとなっています。
日本に関わる地政学
本書にある日本に関わる地政学についてピックアップしてお伝えします。
なぜ北方領土は返してもらえないのか
- ロシアは北方領土の向こう側でアメリカをけん制
- 新しく開発された北極海ルートを守るため
- ロシアと日本での重要度の違い
日本とロシアの衝突が続く北方領土。国際法的には日本の領土ですが、なかなか返還されないのはこの3つが理由です。
1つ目は、ロシアにとってアメリカからの防衛のため。もし日本に北方領土が返還されれば、米軍基地が建設される可能性があります。国防のためにもロシアとしては絶対に避けたいと思っています。
2つ目は、2000年ごろに新しく開発された「北極海ルート」を守るため。これまで通行できなかった北極海は、貿易の新しい道となる可能性があり、他国から守りたいと思っています。
3つ目は、ロシアと日本では北方領土の重要度が違うため。日本にとっては国民感情、周辺の海産物が採れるといったメリットしかありませんが、ロシアにとっては上記の2つの理由があり、非常に重要視しています。そのため、交渉がなかなか進まないのが実情です。
アメリカにとっての沖縄米軍基地問題
- 拠点として超重要な位置にある
- アメリカ人の心理的負荷が低い
- 世界最高レベルの設備
- 社会資本、政情が安定している
沖縄にある米軍基地は、たびたび地域住民とトラブルが生じており、撤退を求める声もあります。
しかし、アメリカにとって沖縄米軍基地は地政学上「完璧な拠点」と言われるほど重要で、今後も手放す可能性は低いと考えられます。その理由はこの4つです。
1つ目の理由は位置です。ICBMという大陸間弾道ミサイルを配置すれば、世界中に主要な都市を射程におさめられる場所にあります。ミサイルを置くには絶好の位置という訳です。
その他にも、アメリカ人の感情面(沖縄はアメリカも被害を受けながら勝ち得たという意識があり、他国の領土という心理的負荷が小さいとされています)、基地の設備のレベルの高さ、社会資本のインフラが整い、政情も安定しているので着実な運用ができるといった観点から「完璧な拠点」とされています。
中国が尖閣諸島や対馬列島に攻勢をかける理由
- ランドパワーとシーパワーの両方を手に入れようとしている
- 近海を制覇するには拠点が必要
- 対馬・尖閣諸島以外の島でも戦いが始まっている
中国はランドパワーの国で、長らく隣接する国との衝突がありましたが2000年代にようやく国境が確定しました。国防に割いていた力を国外に向け、ランドパワーだけでなくシーパワーを手に入れようとしています。
近海の制覇にまず重要となるのが拠点です。中国から見ると,対馬・尖閣諸島は海上進出を阻む位置にあるため、目立って侵攻を受けているように見えます。しかし、実際にはその他の島も中国からの攻撃を受けています。
基本情報
- タイトル:サクッとわかるビジネス教養 地政学
- 著者:奥山真司
- 出版社:新星出版社
- 発刊日:2020年6月13日
- 総ページ数:159ページ
- 価格:1320円
感想
これまで、ニュースなどを見て国際問題が多くあることは知っていましたが、点でしか捉えられず、それぞれの問題の関連が分かりませんでした。しかし、地政学を通じて各国の思惑が分かるようになると、それぞれの問題がつながったように感じます。
また、地政学を知ると、それぞれの問題が簡単な平和論で片付かないことにも気付きます。争うのは単なる感情だけでなく、さまざまな「利益」、「恐怖」、「名誉」が関わり争うだけの理由があります。各国の思惑を知ったうえでこれからどのように展開していくのか、とても興味深いです。
さらに、思っていたよりも経済との関連が深く、地政学を知っていると今後の世界情勢を予想することもできるのではないかと思いました。そしてそれは投資判断をするうえでも重要になります。継続して学んでいきたいと思いました。
僕は理系で、実は世界史がめちゃくちゃ苦手でした。しかし、この本はイラストが多く読みやすいため、世界史や地理に苦手意識を感じている人にもオススメできると思います。
逆に得意だった人には物足りない内容かもしれません。そんな人は同じ筆者の別の本を読むのもオススメです。